公的な職業訓練を活用してITスキルを身につけるには?費用負担を抑える方法
経済的な負担を抱えながら、ITスキルの習得やキャリアアップを目指したいと考えていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。特に、新たな資格取得やスクール受講には費用がかさむため、一歩踏み出すことをためらってしまうこともあるでしょう。
しかし、国や自治体は、求職中の方やスキルアップを目指す方を支援するための様々な公的制度を用意しています。これらの制度を賢く活用することで、費用負担を抑えつつ、IT関連の知識や技術を習得することが可能です。
この記事では、費用をかけずに、あるいは費用を抑えてITスキルを学ぶことができる公的な職業訓練制度を中心に、その具体的な内容や利用方法について詳しくご紹介します。
公的な職業訓練「ハロートレーニング」とは
公的な職業訓練は、「ハロートレーニング」とも呼ばれ、主にハローワークを通じて提供される求職者向けの職業訓練制度です。これは、希望する仕事に就くために必要なスキルや知識を習得することを目的としており、多くのコースが無料で受講できます(ただし、テキスト代などは自己負担となる場合があります)。
ハロートレーニングには、主に以下の2種類があります。
- 離職者訓練(公共職業訓練)
- 求職者支援訓練
それぞれの特徴を見ていきましょう。
1. 離職者訓練(公共職業訓練)
主に雇用保険を受給されている方を対象とした訓練です。
- 制度概要: 都道府県などが主体となって実施する職業訓練です。
- 対象者: 原則として、ハローワークに求職申し込みを行っており、雇用保険を受給されている方(受給資格のある方)が対象です。ただし、自治体によっては、雇用保険を受給できない方でも一定の条件を満たせば対象となる場合があります。
- 支援内容:
- 訓練受講料: 無料です。
- 訓練期間: コースによりますが、数ヶ月から2年程度の比較的長期のコースもあります。IT関連では、プログラミング、ウェブデザイン、ネットワーク構築、CADなど多岐にわたる分野のコースが提供されています。
- その他: 訓練受講中は、一定の要件を満たせば雇用保険の失業給付を受けながら受講できます。また、通勤手当や受講手当が支給される場合もあります。
- 利用方法・手続きの流れ:
- 最寄りのハローワークで求職申し込みを行います。
- ハローワークの担当者に相談し、職業訓練の受講を希望することを伝えます。自身のスキルやキャリアの目標などを相談し、適切な訓練コースのアドバイスを受けます。
- 受講したいコースが見つかったら、ハローワークを通じて申し込みを行います。多くの場合、筆記試験や面接などの選考があります。
- 選考に合格すれば、受講指示または受講あっせんを受けて訓練開始となります。
- 利用する上でのメリット・デメリット:
- メリット: 費用負担を抑えて専門的なITスキルを体系的に学べる、訓練内容が実践的である場合が多い、訓練校によっては就職支援も受けられる。
- デメリット: 希望するコースの開催が限られる場合がある、選考があるため必ず受講できるとは限らない、訓練期間中は就職活動の時間が限られる可能性がある。
- 注意点: コース内容や期間は地域や時期によって大きく異なります。必ずハローワークで最新の情報を確認し、ご自身の希望や目標に合ったコースを選びましょう。また、テキスト代や資格試験の受験料などは自己負担となるのが一般的です。
2. 求職者支援訓練
主に雇用保険を受給できない求職者の方を対象とした訓練です。
- 制度概要: 国の求職者支援制度に基づき、ハローワークのあっせんで民間教育機関などが実施する職業訓練です。
- 対象者: 離職者の方で、雇用保険の受給資格がない方(または受給を終了した方)、学卒未就職者、自営業の廃止など、ハローワークに求職申し込みを行っている方が対象です。
- 支援内容:
- 訓練受講料: 無料です。
- 訓練期間: 多くは数ヶ月程度の比較的短期のコースです。基礎的なITスキルから、特定の分野に特化したコースまであります。
- その他: 一定の要件を満たす対象者の方には、「職業訓練受講給付金」が支給される場合があります。
- 利用方法・手続きの流れ:
- 最寄りのハローワークで求職申し込みを行います。
- ハローワークの担当者に相談し、求職者支援訓練の受講を希望することを伝えます。キャリアコンサルティングを受けて、自身の状況や訓練の必要性などを確認します。
- 受講したいコースが見つかったら、ハローワークを通じて申し込みを行います。選考があるコースとないコースがあります。
- 選考に合格すれば、受講あっせんを受けて訓練開始となります。
- 利用する上でのメリット・デメリット:
- メリット: 雇用保険を受給できない方でも無料で職業訓練を受けられる、比較的短期間で基礎または特定のスキルを習得できる、給付金の支給により訓練期間中の生活を支えられる可能性がある。
- デメリット: 訓練期間が短いコースが多い、給付金には厳しい支給要件がある、希望するコースがない場合がある。
- 注意点: 職業訓練受講給付金には、本人の収入や世帯全体の状況、出席状況など、細かな支給要件が定められています。給付金の受給を希望する場合は、事前にハローワークでご自身の状況が要件を満たすか必ず確認してください。
訓練以外の関連支援
公的な職業訓練制度と合わせて活用を検討したい関連支援制度や相談窓口もあります。
職業訓練受講給付金(求職者支援制度)
- 制度概要: 求職者支援訓練の受講者のうち、一定の要件を満たす方に対して、訓練期間中の生活を安定させるために支給される給付金です。
- 対象者: 求職者支援訓練を受講する方で、以下の要件を全て満たす方など。
- 雇用保険の失業等給付を受給できない。
- 本人の収入が月8万円以下。
- 世帯全体の合計収入が月25万円以下。
- 世帯全体の金融資産が300万円以下。
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない。
- 訓練実施日全てに出席するなど、訓練を誠実に受講している(やむを得ない理由の場合を除く)。
- 世帯の中に同時にこの給付金を受給して訓練を受けている者がいない。
- 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けたことがない。
- 支援内容: 職業訓練受講手当として月10万円、通所手当(上限あり)、寄宿手当(該当者のみ、月1.7万円)が支給される場合があります。
- 利用方法・手続き: 求職申し込み、求職者支援訓練コースの選択と申し込み、そしてハローワークでの給付金の申請手続きが必要です。訓練受講中も、毎月ハローワークへ行って支給申請を行います。
- 注意点: 要件が細かく定められており、訓練期間中も継続的な確認があります。支給要件の詳細は必ずハローワークで確認してください。
ハローワークの職業相談・キャリアコンサルティング
ハローワークでは、求職者一人ひとりの状況や希望を聞き、適切な職業訓練コースの案内だけでなく、求人情報の提供、応募書類の添削、面接対策など、就職活動全般にわたる支援を無料で提供しています。また、キャリアコンサルタントによる専門的なキャリア相談を受けることも可能です。
訓練を受けるべきか悩んでいる場合や、どのようなITスキルを習得すれば良いか分からない場合でも、まずはハローワークの窓口で相談してみることをお勧めします。ご自身の状況に合わせた、具体的なアドバイスを得られるでしょう。
公的制度を効果的に活用するためのポイント
公的な職業訓練や支援制度を最大限に活用するためには、いくつかのポイントがあります。
- まずはハローワークへ相談に行く: ご自身の状況(雇用保険の受給資格の有無など)によって利用できる制度が異なります。自己判断せず、必ずハローワークの窓口で相談し、ご自身の状況に合った制度やコースを紹介してもらいましょう。
- 自身の目標と訓練内容を照らし合わせる: どのようなITスキルを身につけたいのか、将来どのような仕事をしたいのかを具体的に考え、訓練コースの内容がその目標達成に役立つか慎重に検討しましょう。訓練校の説明会に参加したり、カリキュラムを詳しく確認したりすることが重要です。
- 複数の情報を比較検討する: ハローワークで紹介されるコースだけでなく、各都道府県のウェブサイトでも訓練情報が掲載されている場合があります。様々な情報を集めて比較検討することで、より良い選択ができる可能性があります。
- 制度の最新情報を確認する: 制度の内容や要件、募集コースは随時更新される可能性があります。利用を検討する際は、必ず厚生労働省やハローワーク、各自治体の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
まとめ
経済的な理由でITスキルの習得を諦める必要はありません。国や自治体が提供する公的な職業訓練制度「ハロートレーニング」は、費用負担を抑えつつ、IT分野を含む様々な分野のスキルを習得するための強力な手段となり得ます。
まずは最寄りのハローワークに足を運び、ご自身の状況を相談することから始めてみてください。専門の職員が、あなたに合った訓練コースや利用できる支援制度を丁寧に案内してくれるはずです。
一歩踏み出す勇気を持つことが、未来の可能性を広げる第一歩となります。この情報が、皆さまのITスキル向上とキャリアアップの一助となれば幸いです。